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神経律動倶楽部

新世代への掲示

A YOUNG PERSON'S GUIDE TO PROG
第2章
PART 2

音楽について書く時、独断と偏見によってしまうことは必至です。また自分の 場合あまり資料等を参照せずに、耳と断片的記憶、曖昧な知識を頼りに書いて ますので至る所に間違い、脱落、誤解があるかも知れません。
売れている音、おもしろいことやってる音、新鮮な音に限らず、なかなか独創的で いいではないか、と思う音にも、その先駆者がいたり、あるいは単にパクリだった りすることも少なからずあるわけで、騙されない賢い消費者となるためにも、もっ と広く深く掘り下げて行きたいと思っております。 それではロックに限らず、私がおもしろいと思ったものを順次書き連ねていき たいと思います。


TUBLAR BELLS/MIKE OLDFIELD

(1973)

その発足時期においてヨーロッパのプログレを積極的に紹介し、その後パンク、ニュー ウェーブなど時代に即した音楽を提供し、現在では航空業界にまで参入している、まさ にベンチャー的企業となったヴァージン・レコードの記念すべき第1作として、この インストルメンタル作品は世に出た。ケヴィン・エアーズのバンドのギタリストとして も活躍したマイク・オールドフィールドは当時若干20歳の青年であった。マナー・ス タジオでいろいろな楽器を用い、オープンリールに2000回以上に及ぶオーバーダビ ングにより完成させたのが、このチューブラー・ベルズである。なぜかこのイントロ部 分がオカルト映画「エクソシスト」にも使用されヒットに拍車がかかったのであった。

主題ともいえるピアノとグロッケンスパイルによる7+8拍子の傲慢なるイントロ から、次々と弦楽器、打楽器、鍵盤楽器、管楽器を加えつつ、スムーズに、あるいは 大胆に変化していくメロディー。最後にガット・ギターによる主題の演奏でパート1 は終るが、特にクラシック音楽のようにしっかりとした構成ではなく、単にフレーズ をよせ集めて繋いだだけという印象を受ける。

なぜかここで僕が紹介している作品は、長大なものばかりであるが、これもまた(ア ナログLPでいうところのA面、B面通して1曲というものである。やはりおもしろい 音楽は、時間に制約されないものであり、商業的なシングルに収録可能な長さを年頭に 置いて作られるものではないことの当然の結果でもある。

この"TUBULAR BELLS"のBBCスタジオ・ライブが、デビュー20周年記念のヴィデオ "the Mike Oldfield ELEMENTS" (Polydor/PolyGram Video POVP-1016 1993/Color/Stereo Hi-Fi/52 min/\4,800) に収録されている。長髪のマイク・オールドフィールドが、ここではベースを弾いて いる。その他マイク・ラトリッジ、スティーブ・ヒレッジ、フレッド・フリスなどの 当時から交流の深かったカンタベリー系のミュージシャンが多数参加しており、 なかなか見応えがあるが、途中で終わってしまうのが非常に残念だ。 フル・バージョンの映像が出て欲しい。また本当にBBCスタジオで撮ったのか疑う 程、音質が最悪。

チューブラー・ベルズがヒットした後、彼は同様な(ゲスト・ミュージシャンは多少 参加しているが)彼自身のマルチ・インストルメンタルによる多重録音という形式で "HERGEST RIDGE""OMMADAWN"という作品を発表、さらに1976年 にはLP2枚組みの4部からなる70分に渡る超大作"INCANTATIONS(呪文)" を完成させた。

その後はボーカルものや小品を集めた作品、映画音楽などが主体となる。 サンプラーを使用した作品は、初期の諸作に比して何か暖か味に欠けるものとなり、 評価も下がったような感がある。 最近ではSF作家A.C.クラークの物語に添えた "The Songs of Distant Earth"や ケルト音楽を積極的に題材とした"VOYAGER"など、テクノロジーを駆使しつつ も、大地、海、宇宙といった自然を感じさせる音を非常に大切にした作品を発表して いる。20年でテクノロジーも進化しCMIという機械の中でマイクの音がすっぽり 組み立てられ製造できてしまう時代になったが、今でもあの20年前の生楽器の音に みずみずしい感性を感じるのは僕だけじゃないと思う。"Voyager"でバグパイプとユ ニゾンするマイクのギターはこれから何を語って行くのか.......

Mike Oldfield's Pagefujitukaさんのマイク・オールドフィールドのページ。

SEVEN UP/ASH RA TEMPLE


(註)ジャケット画像は"7 UP"ではなく、ファースト・アルバムです。

ドイツのサイケデリック・プログレ・バンド、アシュラ・テンプルがアシッド文化 の教祖ともいえるティモシー・リアリーと共演した、この歴史的録音もCD化され ているようです。

SEVEN UP/七上

TIMOTHY LEARY and ASH RA TEMPLE/阿修羅寺

  1. SPACE/空間
      Downtown/下町へくり出そう
    Power Drive/動力降下
    Right Hand Lover/すっかり恋人
    Velvet Genes/まったり遺伝子
  2. TIME/時間
      Timeship/時間飛行船
    Neuron/神経素子
    SHe/彼(女)
1972 Live from THE BERN FESTIVAL
PERSONNEL:TIMOTHY LEARY(vo),
BRIAN BARRITT(vo),
MANUEL GOTTSSCHING(g),
STEVE A(org),
その他大勢

例によって邦題は僕が勝手に付けました。この全2曲入りってところが、思わ ず好きです。この時点では、サウンドはそれほどCOSMICではありません。 (これ以降の天ぷらがとれたやつより)全部で7つのパートで構成されています。 アナログLP時代の呼び方で言えば、構成的には普通の歌と歌をSEやノイズ で繋いでいったA面と、段々高度な精神世界へ飛んで行くB面という感じです。 特にA面は歌とSEが同等の音量レベルで入ってるので「わけわかランド」値 (訳がわからない度数)が大きくなる理由です。最終楽章のオルガンをバックに して延々と続くコーラス部分はぜったいピンク・フロイドの「原子心母」の影 響大だと思われるのですが、どうでしょうか。

またティモシー・リアリーが参加した音楽ということで、非常に貴重です。 リアリーはアメリカに於いてLSDの幻覚作用を用いた精神医学の実験により 大学、国家から追い出され、永年獄中で過ごした学者です。アルバム・タイトル である7UPとは、おそらくケン・ウィルバーらが提唱した「精神の7段階」 のことでしょう。すなわち、最も低い日常的な精神レベルから、最も高度な究 極のリアリティの悟りのレベルまで虹のごとく、意識はスペクトルに分けられ るというものです。これがジャケットデザインにも反映されているようだ。

ついでに、アシュラを理解する上での参考文献には決してなりませんが、リア リーの書いた「神経政治学」(発行元:トレヴィル)という本があるんですが、 これがなかなか結構おもしろいです。序文は、あの恐怖の生物機械デザイナー、 H.R.ギーガー!です。彼は、リアリーを獄中から出す運動にも署名したり しているリアリーの信望者であったりするんですねー、これが。逆にギーガー の図集にもリアリーが序文を書いてたりして、ほほえましいです(笑)。
内容はというと、まったく難しい政治論ではなく、ほとんどを獄中で書いた という、私的感情剥き出しの偏屈なエッセイ集なんですが、彼のカリスマ性は いかんなく発揮されてる。70年代の自分に対する不当評価の話しから始まり、 オニールのスペース・コロニー計画を精神面まで拡張したようなSMILE2 計画なる常識人からは妄想としか取られないだろうと思われるような壮大な構 想を語っている。そんなんだから全然「政治学」になっていないところがまた をかし。ですから政治・経済の苦手な僕でも楽しく読めちゃったりして、世界 政治の真相がわかってしまったような幻覚をおぼえるのです。

A RAINBOW IN CURVED AIR/TERRY RILEY(1969)


  1. A Rainbow in Curved Air
  2. Poppy Nogood and the Phantom Band
これは現代音楽のカテゴリーに入るものですが、このアルバムはロック方面 への影響が非常に大きいと思われます。(この曲のタイトルから取った、 Curved Airというバンドもある。)いわゆるミニマル・ミュージックで あり、数種の楽器の即興的演奏をテープエコー処理を加え、ループを重ねて いった多重録音作品で、瞑想音楽的です。18分に渡るタイトル曲では 電気オルガン、電子ハープシコードなどが用いられ、ジャーマン・テクノな 音への影響を感じます。2曲目ではサックスの音がメインの素材となってま す。楽器は全く異なるのですが、かなりインド音楽的な雰囲気を持っています。 ミニマルなリフにロング・ディレイかかったサックスの即興を聴いていると、 これはソフト・マシーンではないかと錯覚を起こすほど、中期のソフト・マシーン に影響を与えている事がわかります。実際ソフト・マシーンの創始者である デヴィッド・アレンがパリで彼やバロウズに出会っていなかったら、ソフト・ マシーンやゴングはなかったか、あるいはもっと普通の音楽になっていたかも 知れない。

その他彼の作品では、前作にあたる"In C"(1968)が有名。 これはわずか1〜4小節ほどの短いフレーズを種々の楽器(主に管楽器)が演奏し、 音のうねりが延々と持続して行くというものです。コンダクターなしにリズムは 全体の奏者の半即興的なパルスに支えられて進行し、非常にゆるやかにフレーズの 加減が発生する。私の個人的な解釈では、このような演奏形態の実験であるとともに、 Cおよび、その倍音系列(C,G,E,B,D,F#,A)的な 音の重ね合わせで、Cという特定周波数の音を徹底的に味わい、C音の持つ意味、 人体・精神への効能 を発見しようという試みではなかろうか、などと必要以上に推測を巡らせます。 CDでは約40分の演奏が途切れず演奏されているので、瞑想のBGMとして トランスを導くのに使用するのにも十分な長さです。

NAKED CITY/JOHN ZORN(1989)


Personnel: NYアヴァンギャルド・シーンの代表選手のひとり、ジョン・ゾーンのバンド。 あるいはプロジェクトと呼ぶべきでしょう。日本在住時に知己を得たボアダムズ やルインズあたりのサポートを得、グローバルな視点からも最先端を行っている アクロス・ザ・ボーダーな分野の第一人者と言えます。他にもコブラ、ペイン・ キラー、マサダなど非常にコンセプチュアルなプロジェクトにアカデミックに取 り組んできている彼ですが、この作品あたりが最も聴きやすいのではないでしょ うか。

バットマン、007のテーマを始め、エンリオ・モリコーネ、ヘンリー・マンシ ーニなどの映画音楽を、ある時はオリジナルに忠実に、あるときはオーソドックス なジャズスタイルで、あるときはフリーに、そしてまたあるときはハードコアに、 しかもそれが全く突如変化する。全体として過激で狂気に満ちたハードボイルド な夜の都会を想起させるものとなっている。

彼のアルト・サックスによる超フラジオ(通常演奏可能領域を越えた高い音程の音) トーンは断末魔の叫びと言うよりも人間の恐怖の悲鳴にも似たハイトーンが、 このアルバムを聴くことにより、何も違和感なく感じるどころか、その美学を感じ て来るのです。

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Last modified on Aug.17,1997
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