GONG in JAPAN

ゴング来日の記録目次

はじめに

1996年6月、遂にデヴィッド・アレン率いるORIGINAL GONGご一行様が来日を果たし、翌1997年9月にも再来日いたしました。実は更にこれに先立つ半年前に、アレンはヒュー・ホッパーおよびNY アバンギャルド・シンガーのKRAMERと共に来日の予定があったのですが、結局アレンは飛行機に乗っていませんでした。 せっかく大阪まで行ったのに、ショックでした。

どちらにせよ、ゴングとしての来日ではなかったので、もし 来たとしても、KRAMERとのデュオ形式のようなものになっていたと思われ、 それだったらやはり’96年の初来日でGONGとして実際に演奏できたことが結果的にもよかったのかも知れません。私は名古屋公演しか見てませんが、GONGの初来日公演は事実非常に印象に残るステージでした。

そのGONG初来日公演について語る前に、’95年のこの不祥事について、 当時を振りかえり、2度とこのような悲しいことが起こらぬよう書き留めて おきたいと思います。

幻のアレン初来日

まさかのジャーマンサイケな70年代バンドなどが多数来日する中、 突如、我々に驚愕のニュースがもたらされた。何とデーヴィッド・アレンが来日するというのだ。仕掛人は何度も来日しているNY時代のアレンの知己、シンガーソングライターでアレンやヒュー・ホッパーともソロを共作している、シミーディスクのオーナーでもあるKRAMER。彼が前回の来日時に「今度はアレンを日本に連れてくる」と観客に約束したそうで、それが遂に実現することとなったらしい。

しかし、我々は当初から半信半疑半魚人ではあった。なぜなら、アレンおよびゴングといえば、筋金入りのヒッピーであり、当局がいろいろな面で来日を許可しないのではないか。 ゴング全盛期である’70には、どんな手を使っても無理だったであろうが、’90年代になっていろいろ規制緩和が進んだにせよ、そんなに簡単に来日は実現しないと思われた。

しかし、チラシには堂々とゴングと銘打ち、前売りチケットも発売されたからにはでかけて行って、この目で確認するしかない。万一、何かの間違いで来日できたとしたら、これを逃せばもう永久にアレンを生で見ることはあるまい。そんな気運が高まっていた95年の夏であった。そして残暑厳しい9月24日、わざわざ大阪まで高速3時間車を飛ばしたのであった。

’95来日時の日程:

出演者:

という内容で、名目上はゴングとしているが、「アレンしかメンバーがおらんではないかー。このメンバーでゴングと名乗るのは名ばかりどころか詐欺同然、公共広告機構に過大表示だと訴えねばならない。」と怒るところであろうが、そういうことは、あらかじめ予想していたので別にいいのだが、本当にアレンが来るのかという不安は、ライブハウスの前に並んだ皆(この時点で私は純粋なクレイマーのファンもいるとは思っていなかったので)が思っていたことだろう。しかし当日、開場寸前になって「アレンは出ません」との通知を受け、がっくり。

なお、アレンが出ないということで、チケットの払い戻しも行なわれたのであるが、たぶんそれを理由に帰る客はいないと踏んだ、興行者側の作戦にまんまとはまって、一応聴いていくことにした。わざわざここまで来て、アッサリ帰るなんてできる訳ないじゃん。そうなのだ、事前にアレン不参加などと言ってしまったら、客がずいぶん減っていたかもしれない。KRAMERは前述の通りアレンやホッパーと共作を作ったり、彼のソロ・アルバムにロバート・ワイアットをゲスト・ヴォーカルに迎えたりもしている。アレンとは彼の渡米時期から交流があり"ABOUT TIME/NEW YORK GONG"や"DEATH OF ROCK/DAEVID ALLEN"にも彼の名が見える。ここはひとつクレイマーの顔を立てて(?)努力だけは買って、抗議の払い戻し行動は控えることとした。

という訳で、アレン不在のライブは相当盛り下がるだろうと思ったら、そんなことはなく、客はALLENまたはHUGH目当てとは思えないような、若い人達が半数以上を占めて いた。そうなのだ、このとき初めてKRAMERのファンも大勢いるのだ。なかなかルックスもいいしね(米国のダリル・ホールって感じですか?)。でもはっきり言って、音的にはゴング・ファンを満足させるものではない。他の人たちも同様。敢えて言うなら、前座のかなりヘヴィーな日本のバンドが良かった。それと ヒュー・ホッパーを生でその存在が確認されたこと、また彼のベースで、Damon & Naomi の歌う "Memories" だけが唯一、来た甲斐を感じるものだった。とほほ。


遂にGONG初来日!

Click to Download (gif 153kb) さて、その翌年、1996年6月にやっと来日が実現したのであった。その時の ジャパン・ツアーのスケジュールを記す。

岡山公演は急遽決定したもので、実際にはアレンとジリによるデュオ・コンサート および、観客とのフリートークであった。この時、私の友人がこれに行くとのこと で、私の要望と彼自身の質問をフリートークの内容については、私の 友人すえひら氏に寄稿して頂いたので、そちらを参照されたい。
来日メンバー:
というわけで以下は私が観た6月6日名古屋クラブ・クアトロでのライブ・レポート (ライブ直後に書いたもの)です。
思い出すと未だに興奮さめやらヌが、昨日は20年間マチに待ったゴングの来日ライ ブだった。半分は、またアレン氏が飛行機に乗ってなくって中止かも知れないぞと 言う不安はあったものの、仕事終わって駆けつけると、クワトロ前には約10名ほど の長蛇の列が・・・.CDなどを物色しているところへディディエ・マレルブその人 が現れたものだから、すかさず彼のCD(FLUVIUSだったかな)を買い、サインして もらった。

「Mr.BLOOMDID、わしゃおみゃーさんの竹笛が大好きなんだわ」「そりゃおおきに。 あ、このCDはええで〜」「いやぁ名古屋じゃこういうの手に入らなくって困るぎゃ」 と会話を交わす。もちろんフランス語じゃなく英語で通じた。思ったより小柄な方だ った。

演奏曲目などの詳細は改めて書くとして、(他の会場でもたぶんそうだと思われるが) おおむね生誕25th記念ライブと似た構成であった。ただしマレルブ氏のソロが 結構長めだったので大満足だ。会場を見渡すと、当初はこの人数では情けないぞという 客数だったが、開演前にはまあまあの入りで安心。全体的に客層は高齢ですが若い人 も結構多かったようだ。プロペラ付きポットヘッド帽子を被って来る女性もいて、 こんな地方都市にも熱心なファンがいることにアレン氏も嬉しかったのではないだろ うか。

LIVE SET LIST

"YOU"後半のメドレーのポリリズムで変化していくところなどは、よく聴くと少し トチリがあったりしたが、実に即興性の高い(と思われる)面白いステージだった。

ALLEN氏はステージ上ではさすが説得力あるパフォーマーである。時代錯誤な衣装 と、コミカルな語り口調。いったい誰が教えたのか「いい感じ?」って日本語(コギャ ル語?)を盛んに使っていた。ほとんど変らないALLENに比べGILLIはやはり年齢相応に お歳を召されてしまって、SPACE VOICEにはいちだんと渋みが増したと言っておこう。 ただしダンスは駄目。

MARHELBE氏はサウンド上の要であり、ソロもかなり長めだった。ところが彼はALTOと SOPRANO SAXのみでTENORは吹かなかった。荷物になるので持ってこなかったのか、 歳なので体力的にもう止めたのか知りませんが、「電話帳の食事」ではSOPRANOを使っ たのが逆に新鮮でした。それにしても彼のBAMBOO FLUTEは最高に美しい音色だった。

もう一つ重要な要素であるスペイシーなシンセ・エフェクト担当のTIM BLAKEがいなく て大丈夫かと心配したが(最近ずっとアレンと活動を共にしている)SHARPSTRINGが ギターの片手間にシンセを操作していた。彼は随分若いんだろうが、今ではしっかり GONGに溶け込んでいる。ただしギターのフレーズにヒレッヂのようなアウト感覚が欲 しいと思った。


岡山追加公演のレポート

以下は、この初来日のときに急遽決まった岡山公演と、その後に開催されたアレンとジリとのトークショーの記録である。これに私の友人すえひら氏が行かれて、今回私の ページにその時のことを思い起こして書いていただいたものです。

1996年6月12日(水曜日)岡山パッパーランドにて。

急遽決まった追加公演で、事前に電話で問い合わせても「2人の歌と ジリの詩の朗読、それからトークセッションの2部構成になる予定です。 料金も未定です。」という返答。出、とりあえず当日出かけて行きました。

ライブ自体は電話で聞いていたとおりでしたが、第2部のトークセッション というのは実は2人と通訳の女性がステージの端に腰掛けて(私の位置から 2mくらいのところ)、オーディエンスの質問に答える、というのもでした。 そのオーディエンスの年齢層は意外に低く10代後半〜20代半ばが多かっ たかな。むしろオヤジ、コヤジのたぐいが少数派という感じ。で、若い連中 が Angel's Egg のLPを持ってきてたりとかしていて、驚きました。開始前 に通訳の女性から「2人はドラッグについても色々な体験があるので、そう いう質問も大歓迎だと言っています。」と前置があったものの、さすがにそ のテの質問はたいしたものはありませんでした。 全体の半分は2人に対する人生相談や音楽観や人生観に関するものだったの も不思議といえば不思議。彼らからすると、老師みたいに感じられるのかも しれません。 でも、音楽関係で突っ込んだ質問はあまりでないので、色々質問してきました。 まず、予知夢さんから事前にリクエストのあった質問から

Q.ALLEN氏はかつてW.バロウズ氏と仕事をしたそうですが、それはどんな内容だったのですか?

A.1962年頃、バロウズの舞台(演劇か?)でループ(テープループ?)による音楽をやっていた。

Q.ALLEN氏は今はロンドンに定住しているのですか?

これは間接的に判ったんですが、今はオーストラリアに住んでいるようです。 他の人の質問に対して「これで今回のスケジュールが終わるので、オーストラリアに帰る。私は今年58歳だが2歳の子供がいるので、帰ったら真っ先に抱きしめたい。」と年齢も判明。 それに続いてジリも「私もツアーに出てしばらく子供に会ってないので、 同じく早く帰って抱きしめてやりたい。」と言ってました。

Q.ゴングジラをどう思いますか?

A.これも他の人が「最近新譜を買ったんだけど。」(勘違いしてる)と質問したのに対して、「それは、アラン・ホールズワースがやっているバンドで、我々とは関係のないものだが、とてもいいバンドだ。」ということでした。

さて、ここからが私の質問。

Q.インターネットのホームページにジリさんのメールアドレスがあったんですが、あれは本当に届くようになっていますか?

A.これはアレンが「我々に対するメールはG.A.S.という会社(何とかソーセージの略でもある、と言ってみんなを笑わせてました。)を通して、読むことがきるようになっているので、後でアドレスを書いたカードをもらってくれ。」と言いつつ、自分の財布(?)から1枚取り出し、ステージから乗り出すようにして、手渡ししてくれました!(感激!)

Q.ビル・ブラッフォードがゴングにいたという話が日本に伝わっているのですが、本当でしょうか?

A.そう、彼とはすっとプレイしていた。ただ、彼は大きいホールでも小さいステージでも常に同じスタイルでプレイするので、そういった使い分けのできるピップの方がよかったのだ。でも、ピップは時々押さえが効かなくなるので、コントロールが必要だ。(笑)
そうそう、彼とは1度ツアーもやった。

Q.インドネシアに GONG2000 というバンドがいるんですが?

これはジリも笑ってましたが、アレンが「そんなバンドのことは知らないなぁ。」と言った後を受けて「別に、そのバンドがGONGの名前を使っていても、いっこうに構わないし、日本に来て私の声がサンプリングされて使われているのを何回か聴いたけど、それもまた構わないんじゃないだろうか。」と言ってました。そういう自由な考え方の持ち主なんでしょうか、このライブ自体カメラ、テープレコーダーその他なんでも持込みOKで、前の人なんかはビデオ廻してました。判ってればテレコとかデジカメもって行ったんですが。(残念)

A.日本の印象は?

アレン:凄く綺麗な街だけど、時々50年代のオーストラリアのように人があくせくしているのを見かける。
ジリ:女性が閣僚、会社の重役、社長など重要な地位についていない、もっとそういう方面が進んで行くべきだと思った。

Q.ソフトマシーンのメンバーと今でも交流がありますか?

A.アレン:

で、「あと一人は……………」と笑ってましたが、小さい声で通訳に耳打ちして「みんなに言え」と即したら「彼はジリと寝たからだめだ。」と。(大笑い)
「このバンドでは、みんなが王様だったので、そう長続きするハズもなかった。」 そうです。

Q.今日のライブでは現実的な内容をみんなに語りかけ、GONGとは逆のもののようですが。

A.GONGの場合は6人のメンバーの1人として、やるべきことが決まっているし、ソロでは自分の考えをよりストレートに表現できる。

Q.一時期 GONG を離れていましたね。

A.あの頃、レコード会社がバンドの音にあれこれ口を出すようになって、それが嫌で一時バンドを離れた。

Q.いろいろあるゴングとの関係は?

A.ピエール・モエルランのゴングとかマザー・ゴングとかニューヨーク・ゴングなど色々なゴングがあるけど、それは総て我々のファミリーのようなもので、全部がゴングとして繋がっている。

まあ、こういった感じで GONG のライブとは全く違うデュエット・ライブでしたが、ワンドリンク付5000円の価値は十分以上にあったと思います。


GONG再来日によせて

さて、いよいよ2度目の来日公演、去年の初来日とは違い、なにやらユーの リミックスも登場したり、クラブ・パーティーっぽい趣向でやるみたいですが それはまあ、変化があっていいかもしれません。しかしわからないのは、なぜ ’70年代の黄金期のゴングにこだわり続けるのかです。確かに僕らの聴きたいの は、そのころのステージの再現です。見たくても決して見ることのできなかった 遥か異国の地のとても訳のわからんバンド。何にも解説なしの輸入盤の音源。 音楽雑誌に登場することはまずなかった。日本盤のライナーノートを書いてる 人もあまりよくわかっていなかった部分もあったことだろう。そんな謎に満ちた バンドの当時を再現したようなステージを生で観られた感激は忘れられません。

だが、しかし、なぜ"Shapeshifter"という’90年代のゴングをスタートさせな がら、そのコンセプトでライブをしないのか?もし今後3度目の来日があれば、 ぜひ’90年代のゴングを見せつけて欲しいものだ。

予知夢 1997年8月22日


ゴング再来日 in 1997

今回(1997年)の来日スケジュールは以下の通り。

Download Leaflet (gif 293kb)来日メンバー

Daevid Allen(vo,g)
Gilli Smyth(Space Whisper)
Mike Howlett(b)
Didier Malherbe(sax,fl)
Pierre Moerlen(ds,perc)
Steffy Sharpstrings(g,syn)
Orlando Allen(Rave Master)

GONG Live in NAGOYA

at CLUB QUATRO,NAGOYA
on Sept.2,1997

今年は "YOU" リミックス版の来日記念的発売やDJなどのゲストを向えたりして、 去年とは違う趣向なのかと思ったら、去年とほぼ変わらない内容のZe Originalなク ラシック・ゴングだった。言い替えると去年とほとんど同じ内容ということになる。 しかし途中 "SHAPESHIFTER" から1曲(Heaven's Gate)と、さらには初耳曲の披露 もあり、内容的には満足の行くものであった。また名古屋においては、Allen の息子、 Orlando 氏はステージには登場しなかったが、歩くパーカッション、Pierre Moerlen を初めて生で見られて感激だった。

なお名古屋公演の前、8月30日に開催されゴングも参加する予定だった、湯沢(新 潟)でのオールナイト・ロック・イベント、"Natural Hogh Festival" は中止になっ たようであり、名古屋公演が今回来日の初日だったと言うことになる。

前座があるためか、開場時間が6:00PMと、非常に早めだったが、20分ぐらい前にク アトロに到着。去年の来日時とまったく同じロケーションであるのだが、開演前には グッズ売場に10名ほどの人だかり、そして階段には去年の倍くらいの人数に当たる、 約20名ほどの列ができていた。

グッズとしては、黒字に蛍光仕様の Camembert Electrique のTシャツとブルー地に 「宇宙の目」だったか「ゴング曼陀羅」だったか記憶が薄れたが、XLサイズのTシ ャツ(共に¥2500)。それから去年も売っていた "Camembert Electrique" のブ ックレットと Allen の詩集。去年よりは小振りのバッジ。おなじみ"Flying Teapot" などのステッカー。そしてCDなどが並んでいた。CDは特に目新しいものはなかっ たが、Didier Malherbeのソロ"Zeff"を購入した。

ライブ会場で売っていた、アレンの詩集

さて、特に慌てることもなく、列の後ろに並び開場に入場すると、既に客席フロアの 片隅で Yamataka Eye がターンテーブルを回していた。客が特設DJブースに入らぬ よう設けられたロープが笑いを誘う。1時間ほどレアっぽい音源によるリミックスプレイを聴かせた後、ステージにDr.YS(さわさき・よしひろ氏)登場。各 種機材、サンプラー、シンセ、エフェクター類を、ヘッドホン聴きながら、一人のり のりで操作。ゴングのリミックスなども混じえ、約30〜40分の演奏(?)であっ た。結構片付けに手間取りつつも、8:00PM 過ぎにやっとステージにゴングの面々が 1人づつ登場、演奏が始まった。

Personnel:

LIVE SET LIST

  1. INTRODUCTION(IMPROVISATION)
  2. YOU CAN'T KILL ME
  3. RADIO GNOME INVISIBLE
  4. WITCH'S SONG : I AM YOUR PUSSY
  5. THE POT HEAD PIXIES
  6. I NEVER GRID BEFORE
  7. PROSTITUTE POEM
  8. HEAVEN'S GATE
  9. EAT THAT PHONE BOOK
  10. FLUTE SALAD(BLOOMDID IMPROVISATION)
  11. OILY WAY
  12. OUTER TEMPLE
  13. INNER TEMPLE
  14. MAGICK MOTHER INVOCATION
  15. MASTER BUILDER
  16. ALI BABA?(I don't know the title)
  17. THE ISLE OF EVERYWHERE
  18. YOU NEVER BLOW YR TRIP FOREVER

  19. DYNAMITE/I AM YOUR ANIMAL〜CAMEMBERE CODA(ENCORE)
構成的には去年の来日ライブとほとんど同じ。ということは、「25周年誕生パーテ ィー・ライブ」ともほとんど同じ構成であることになる。やはり "Radio Gnome Invisible" がひとつの物語である以上、ライブもそれに沿ったショウとなることは当 然ではあるが、全盛期の演奏を満喫できるプログラムだ。

ゴングお得意の、スペイシーなインプロヴィゼイションでステージは始まった。Gilli のスペース・ウィスパー、Malherbe のフルートに Allen のグリッサンド・ギター。 それに Blake に代わり、Sharpstring が代行して担当している効果音的シンセが加わ ることで実現される、このアトモスファーは他に類を見ないゴング独自の見事な浮遊 的音世界だ。続いてギターが You Can't Kill Me のイントロを弾くと歓声が沸き起こ り、休憩なしに演奏は続くのであった。それにしても、あの年で2時間以上ぶっ通し で演奏するスタミナは素晴らしい。

客は去年に比べ、年齢層が若くなった感じで、ゴングの生演奏においても、たてのり ギャルたちが変拍子でも踊りまくる情景が多く見られた。また最前列には、リアルタ イムのゴング・ファンらしき方達がじっとステージを見入っておられた。客数として は100人弱。名古屋の文化レベルから考えれば結構な入りだったと言えるのではな かろうか。

今回初披露された、1小節抜きのギターリフがとても印象的な "Shapeshifter" からの "Heaven's Gate" では、Sharpstrings 氏がリードボーカルを取り、Malherbe のアルト ・サックスも入らないためアルバムとは少々異なる雰囲気であった。 その後のステージのハイライトとも言える "Master Builder" では去年もそうだった が Malherbe は延々とソロを取り、どこで戻れるのか聴いている方がヒヤヒヤした。 彼のステージでよくキョロキョロあたりを見回す仕草がなかなかかわいい、との事で ある。PAがちょっとリバーブ掛けすぎのせいか、細かいフレーズや息遣いが聴き取 り難かったのが残念だ。

もう1曲、聴いたことのない曲が、この後演奏された。 Malherbe の吹くシャナイ (インドの2枚リードの管楽器。中国のチャルメラと同じルーツである)によりテー マのリフが繰り返される、アラビア風の曲である。これに Gilli の詩の朗読とスペ ース・ウィスパーが付加されるというものだった。詳細は聞き取れなかったが、曲の 最後にGilliが「・・・アリババ」と言っていたので、取り敢えず"Aribaba(仮称)" としておく。

引続きゴングのなかでもっとも人気が高い曲の1つ(と自分で勝手に思っている) "Isle Of Everywhrere" へと雪崩(なだれ)込む。Moerlen と Howlett というリズム隊でこの 曲が聴ける幸せを噛みしめた。特に例のドラムがフィルで入ってくる瞬間は、ぞくっ ときた。リハ不足のせいか、他の曲でもちょっと危ない場面、逆に言うと即興性の高 いゴングなどの演奏の場合、そういった所が聞き所であるのだが、そういう場面が多 々あったが、このあたりの曲になると息もぴったり合ってきた感じがした。

Moerlen のおもしろい点は、本来のリズムを見失いそうなほど、手数(遊び)が多い ことで、なかなかスリリングだったが、Pip Pyle の安定したドラムも曲によってはは まるので、ツイン・ドラムでやってもおもしろいかも知れない。今やゴング伝説のひ とつにまでなっているBill Brufford参加時にもこの曲は演奏されたことだろう。ああ もしそのライブ音源があったら何と素晴らしいことだろう。

そして最後の曲、「永遠の旅」。"Zero ..." と殆どアカペラ状態で歌われる部分を 聴いて、改めて Allen の歌唱力を見直したのでした。最後はお決まりの"You are I and I am you"を皆で合唱。AllenとGilliにマイクを向けられ歌った客の中に非常に 旨い方がおられた。さすがリアルタイム・ゴング・ファンだ。

アンコールは去年に比べ、簡素に"Dynamite:I am your animal"のみだったが、 "Camembert Coda"の部分が非常に長い演奏だった。

さて、この後、京都・大阪、最後に東京(オールナイト)とゴング再来日ツアーは続行されたのであった。

1997.09.11 by YOCHIM.



GLOBAL FAMILY 30th BIRTHDAY PARTY 1999

公演日程 Adv.\6000/Door \6500

Download Leaflet (gif 317kb) Canterbury Family

Trance Generation

(GONGという名は一応付けつつも)今回は良心的に、クラシック・ゴングではないとわかる、しかもかなり経済的につくられたチラシ。だが、このCanterbury Family、夢の共演が実現だ。ヒュー・ホッパーはアレンの青年時代、ソフト・マシーンの前身ワイルド・フラワーズやデーヴィッド・アレン・トリオ時代からの旧友である。 そしてクリス・カトラーは知る人ぞ知る、今や世界的アヴァンギャルドなパーカッショニスト。ソフト・マシーンの後輩バンドであるヘンリー・カウのオリジナル・メンバーでもある。まさにカンタベリー・ファミリーと呼ぶべきトリオだ。 ゴング認知協会のメーリング・リストによれば、この企画は日本だけのものらしい。名古屋公演がないため、われわれ取材班は6月26日の京都、磔磔へと赴いた。以降はこのときのライブ・レポートである。


まだ梅雨の名残る京都の夕刻、老若男女が酒倉を改造したライブハウス、磔磔に徐々に集うなか、DJによる現場ミックスが雰囲気を盛り上げる。そしてさりげなくカンタベリートリオの演奏が始まった。まずはヒューとクリスの即興的現場演奏にアレンが加わり、 初期ソフト・マシーンのHope For Happinessだ。その他、レパートリーとしては、 Who's afraidなどアレンのソロの曲、Dynamite、Es Que Je Suiなどの初期ゴングの作品など。 グリッサンド・ギターも満喫、’69年のトリオとは比較にならないほどの高みにある、久々に聴くアレンの即興的なソロ、ここぞというところでタイミングよくからむヒューとの掛け合いなど、すばらしい。 即席バンドとは言え、即興的に曲構成を組み立てているようで、ネンキを感じさせた。カトラーのドラミングは初めて見たが、まるでリズムを空中で回すごとくのスティックさばき。1時間程度のステージだったが、十分楽しめた内容だった。(ここで帰ってもよかった程)

続くジリのトランス系ユニット(Goodess Tranceともメンバーが異なっている)では、基本的に打ち込みパターンに、アレンらの息子、オーランドがドラムパッドを叩き、ギター、ベースにジリのスペースウィスパーが即興的に乗っかるというもの。途中からアレンも加わり、グリッサンド・ギターや即興的な歌を披露、ステージ上には女の子も踊りだし、開場は飲めや踊れやのクラブ状態となった。さすがにアレンはエンターテイナーだ。パントマイム風のダンスや大袈裟なジェスチャーで笑わせ、無機的なリミックス系打ち込み音楽においても客を退屈させない。
そして最後はGONGのIAOチャント(アルバム「ユー」から)。アレンの呪文からスタートし、マスタービルダーへはどのようにシンクロをとるのか聴いていて不安だったが案の定、ギターが先走ってしまった。しかも打ち込みは転調がきかないので、ワンキーでエンディングになだれ込む、正式GONG版の演奏に比べたら、あまりにもしまりのないものであった。しかしオーランドのドラミングはなかなかなところまで来ているので将来が楽しみだ。


ゴング再々来日 in 2001

Japan Tour Leaflet (JPEG 157kb) この度の来日は去年(2000年)に出された02∞のアルバム発売ツアーであり、去年末の UKツアー(来日メンバーもこのときと同じ)に続く"GONG JAPAN LIVE 2001"である。 GONGとしては3度目、GONG GLOBAL FAMILYまで入れると通算4度目の来日となる。
しかし今回は東京、大阪での3ステージのみで、毎回徐々に縮減傾向にあるのが寂しいねぇ。 せめて名古屋または京都でもう1ステージやってほしいものだ。

来日スケジュール

さて、わたくし予知夢は大阪のステージを見に行ったので、ここにレポートいたすのだ。

GONG Live in OSAKA

at CLUB QUATRO,Sinsaibashi,Osaka
on April.15th,2001

開場時間の6:00pm少し前に現地クアトロ心斎橋のエントランスに到着。 横の非常階段に整理番号順に並ぶように取り計らわれていたが、開場時間にはまばらに 人がいるだけで、あまりにも意味のない番号制だった。それでも開演直前には結構な客の 入りとなっていた。

この日の販売グッズとしては、まずジャケットと同じ紺色地にアレンによるイラスト&文字の02∞のTシャツ。いままでのものに比べ、 これはちょっと地味である。それから昨年(2000年)のUKツアーのポスター。これはなかなか良い。 お馴染み、いろいろなキャラクターのバッジ。そして主に最近出たCD。 私は未ゲットの"University of Errors"とアレンのソロ"Sacred Geometry"のCDを購入しました。

来日メンバーは前述の通り2000年末のUKツアーと同じく、主に新アルバムのレコーディング・メンバーを中心とした下記のようなメンバー。 これまで毎回来日し、新アルバムにも一応参加していたブルームディッドDidier Malherbe(Sax,Flute)が今回 はパスなのが残念である("ライブ・インフィニティー"を聴いても判るとおり、2000年4月の ツアー時には参加していたのに)。 その代わり(?)アルバムには参加していなかったが、Gwyo ZepixがキーボードにてDidierのパートをも担当していた。

2001来日メンバー

Daevid Allen(glissando & lead guitar,vocal)
Gilli Smyth(voicewhisper,horse whisper & bird song)
Mike Howlett(bass)
Chris Taylor(drums,percussion)
Theo Travis(tennor & soprano saxes,flute)
Gwyo Zepix(keyboards)

この日のセットリストは、ちょっと自信がないが、ほぼ以下のような 構成であったと思う。

OSAKA Live Set List

  1. Introduction(Gnome Intro)
  2. Zeroid
  3. Radio Gnome Invisible
  4. Yoni On Mars
  5. Bodilingus
  6. Zero the Hero and the Witch's Spell(Tic Toc)
  7. Witch's Song : I am Your Pussy
  8. Magdalene
  9. Infinitea〜Mad Monk
  10. You Can't Kill Me
  11. Flute Salad
  12. Oily Way
  13. Outer Temple
  14. Inner Temple
  15. She Is The Great Goddess
  16. IAO Chant(Master Builder)
    Encore
  17. I've Bin Stone Before
  18. Tropical Fish
  19. The Invisible Temple
  20. Selene

あらかじめUKのお友達から情報を得ていましたが、やはり'50th風オールドな歌のSEで 照明が落ち、例のSE(Radio Gnome Intro)で演奏開始。演奏曲目的にも先に発売された"Live 2 Infinitea"をほぼ踏襲するものである。これによるとアルバムではインストバージョンだった新作"02∞"の1曲目、"Foolefare"の 歌入りバージョンで新たな世紀の雰囲気の中に始まるはずですが、これは残念ながら飛ばされて新作アルバムの中心曲である"ZEROID" からバンド演奏が始まり、新旧バランスよく取り入れた選曲のステージ("Shapeshifter"からの選曲はないが)が続く。 従来2度の来日公演では中間に休憩を挟んでの2部構成でしたが、今回はぶっ通しで約2時間の演奏。

最初のアレンのコスチュームは、受け狙いでしょうが、C級SF的なチープなナイロンスーツ(蛍光テープ付き)に 四角いメガネがやはり客に受ける。マイク・ハウレットも開閉式ガラリ付きの丸メガネ。しかも途中から片側だけオープンにしての演奏でもなおユトリの表情。ジリは相変わらず時には清楚で時には魔女な素敵な衣装。 (特に"I AM YOUR PUSSY"では怠ることなくちゃんとニャンコなコスチュームに変装?)と いった感じでヴィジュアル的なこだわりも変えていない。以上が純粋なオリジナル・ゴングのメンバーである。

そして新メンバーの管楽器担当テオは生真面目そうに常時グラサン。本来はソプラノサックスも使うはずだがこの時は終始テナーとフルートの持ち替え。例によって"Flute Salad"ではフルートの自由奔放な ソロなわけですが、これがすばらしかった。全般的にみても 特にジャズな即興では着実で完璧なプレイを聴かせて くれた。しかし前述の通りオリジナル・ゴング・メンバーのブルームディド氏の、ゴングに不可欠なユーモアとお茶目さが今回ないのが残念だ。 贅沢ですがやはりツイン管楽器のライブで聴いてみたかった。

ピエール・モエルラン、ピプ・パイルといった歴代のドラマーに代わって新メンバーのクリスはさすがブラック系の心地よいダンサぶるなビートを叩き出す。歴代ドラマーと比べ決してユラギなく、ヤリすぎる所もないのだが、マイクとのマッチングもGooDだし、もう少し行ってしまってもよさそうだ。

そしてアルバムには不参加で去年のライブツアーから参加のキーボード、Gwyoは生楽器等の 繊細な表現を可能にするVL音源(YAMAHA)の巧みな ブレスコントロールにより、本来Didier Malherbeが奏でるべきパートを器用にシミュレートして いた。(特に"Magdalene"においてはDoudoukがCD通りに再現されたのには驚いた。)

アンコールでは、定番の"Dynamite:I am your animal"がなく"I've Bin Stone Before"(日本では初演と思われる)"Tropical Fish"などの 旧作も聴かせてくれた。

全体的な印象として、まだまだGONGもこれからどんどん行ってくれるのではないかという期待感の高まりがライブを通じて感じます。今回は専属ギタリストなしでアレンのギター1本だけですが、これが なかなかのもので敢えて1本で十分じゃないでしょうか。アレンがMCで語った「35年ずっと同じメッセージを送り続けている」 という言葉には、今までのゴングの音楽に対する非常に彼の自信を感じるし、新曲に対する自由度の高い演奏手法にはまだまだ新しい可能性があると思います。

さて、ステージ後、PAのDavid ID氏に頼んでアレンに会わせて貰い、サインと写真をねだると 快く受けてくれた。楽屋まで押しかけた連中もいたが、拒絶しないアレンの心の広さを感じる。 最後にジリとも話が出来て、「毎回の来日はいつもキュートだ」って言っていたので「是非 また来てね」と頼んでおきました。彼らが東京へ向かうのを見送りつつ、次のアルバムそしてまたの来日に期待が膨らむのであった。

2001.05.04 by YOCHIM.



Radio Gnome in Japan
Copyright(C)1997 by Yochim
Last modified on Apr.29,2001